紅茶が食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制する効果について 紅茶が食後の血中中性脂肪値の上昇を抑制する効果について

脂肪が気になる食事には紅茶!

ダイエットや健康対策のために、食事の“カロリー”や食べる“量”を日ごろより気にされている方は多いと思われます。ただ、気づかないうちにカロリー、特に脂質を摂りすぎてしまっている人が実は増加しています。
そのような方々にぜひお勧めしたい飲み物が“紅茶”です。紅茶に含まれるポリフェノールには、脂肪が多い食事の際に、脂肪の吸収を抑えて、体の外に排出する作用があることが報告されています。
脂肪が気になる食事のときには、紅茶を一緒に飲んで、健康的な身体づくりに役立ててみましょう。

①実は、脂肪を摂り過ぎている日本人が増えている!

健康的な身体の維持には、食事から摂るエネルギー量の比率が、タンパク質13~20%、脂質20~30%、炭水化物50~65%となるようにコントロールすることが推奨されています※1
しかし、2019年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると、食事に含まれる脂肪由来のエネルギーが30%を超えている人は、男性で35%、女性は44%もいることが分かりました。また、男女ともに食事に含まれる脂肪由来のエネルギーが30%以上の人は増加しており、栄養バランスが脂質に偏った食生活を送っている日本人が年々増えています。

※1 日本人の食事摂取基準(2020年版)Ⅱ各論 1-5エネルギー産生栄養素バランス(厚生労働省)
脂肪エネルギー比率の推移(20歳以上の男女総数)
脂肪エネルギー比率の推移(20歳以上の男女総数)
資料:厚生労働省健康局「国民健康・栄養調査」より
(注)脂肪エネルギー比率:総摂取エネルギーに対して脂肪からの摂取するエネルギーの割合

たとえば、ビーフカレーライス1皿の食事に含まれる総摂取エネルギー量は519kcalですが、タンパク質、脂質、炭水化物のエネルギー比率は、タンパク質7%、脂質 32%、炭水化物 64%です※2。つまり、摂取カロリーや食事の量だけを気にして、ビーフカレーライスだけで食事を済ませてしまうと、タンパク質が不足しつつ脂肪が多い、偏った「不健康な食事」になってしまいます。脂肪が多い食品を摂るときには、不足しがちなタンパク質を多く含む副菜を食事に追加して食事の栄養バランスを改善するとともに、食物繊維やポリフェノールを多く含む野菜や飲み物を食事に追加して脂肪の吸収を抑えるようにしましょう。

※2 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

②脂肪が多く偏った食事のときに紅茶を勧める理由

実は、紅茶は脂肪を多く含む食事と相性の良い飲み物です。紅茶は多くのポリフェノール成分を含んでおり、紅茶特有のポリフェノール成分である「高分子紅茶ポリフェノール」には、食事に含まれる脂肪の吸収を穏やかにすることで、食後の血中中性脂肪値の上昇を穏やかにする機能があると報告されています。これは、高分子紅茶ポリフェノールが過剰に摂り過ぎてしまった脂肪の消化吸収を抑え、体外に排出するのを助けているからです。そのため、脂肪が多い食事のときこそ、紅茶を一緒に飲んでいただくことをお勧めします。

ヒトが脂肪の多い食事とともに紅茶を摂取したときの食後血中中性脂肪値変化量の濃度曲線下面積値(AUC0-6h)※3平均値±標準誤差)
ヒトが脂肪の多い食事とともに紅茶を摂取したときの
食後血中中性脂肪値変化量の濃度曲線下面積値(AUC0-6h※3(平均値±標準誤差)
臨床試験により、脂肪が多い食事とともに高分子紅茶ポリフェノール(55mg)
を含む紅茶飲料を摂ることで、食後の血中中性脂肪値の上昇が穏やかになること
が示されています。
ラットに高分子紅茶ポリフェノールを含む高脂肪食を4週間食べさせたときの糞便中に含まれる脂肪含量(%)※4(平均値±標準誤差)
ラットに高分子紅茶ポリフェノールを含む高脂肪食を4週間食べさせた
ときの糞便中に含まれる脂肪含量(%)※4(平均値±標準誤差)
動物試験により、脂肪が多い食餌を与えると体外への脂肪排出量が増加しますが、
高分子紅茶ポリフェノールを追加して与えることにより、過剰に摂り過ぎた
脂肪の排出が促進されることが示されています。
※3 足立ら 2016. 紅茶ポリフェノール高含有紅茶飲料の高脂肪食負荷における血中中性脂肪値上昇抑制効果の検討―プラセボ対照ランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験―(第二報)Jpn. Pharmacol. Ther. 44(3): 453-61.
※4 松本ら 1998. Effect of Black Tea Polyphenols on Plasma Lipids in Cholesterol-Fed Rats. J. Nutr. Sci. Vitaminol., 44: 337-42.
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③高分子紅茶ポリフェノールが脂肪の消化吸収を穏やかにするワケ

食事に含まれる脂肪の多くは中性脂肪です。中性脂肪は、体内で消化吸収される際、水に溶けやすくするために胆汁に含まれるリン脂質や胆汁酸によって「乳化」され、脂肪分解酵素リパーゼにより「分解」されたのち、小腸の粘膜から吸収されます。
紅茶に含まれる高分子紅茶ポリフェノールは、中性脂肪が乳化される際に使われるリン脂質と相互作用し、中性脂肪が水に溶けやすくなるのを阻害する※5,6,7とともに、脂肪分解酵素リパーゼの働きも阻害する作用があります※8,9,10このため、食事とともに高分子紅茶ポリフェノールを摂ると、中性脂肪の消化吸収が抑えられ、便とともに体外に排出されると考えられます。

中性脂肪の吸収と排出のイラスト
※5 M. A. Vermmer et al., 2008. Theaflavins from Black Tea, Especially Theaflavin-3-gallate, Reduce the Incorporation of Cholesterol into Mixed Micelles. J. Agric. Food Chem., 56: 12031-6.
※6 I. Ikeda et al., 2010. Black-Tea Polyphenols Decrease Micellar Solubility of Cholesterol in Vitro and Intestinal.J. Agric. Food Chem., 58: 8591-5.
※7 A. Narai-Kanayama et al., 2018. Theaflavin-3-gallate specifically interacts with phosphatidylcholine, forming a precipitate resistant against the detergent action of bile salt. Biosci. Biotechnol. Biochem., 82: 466-75.
※8 M. Nakai et al., 2005. Inhibitory Effects of Oolong Tea Polyphenols on Pancreatic lipase in vitro. J. Agric. Food Chem., 53: 4593-8.
※9 S. Uchiyama et al., 2011. Prevention of diet-induced obesity by dietary black tea polyphenols extract in vitro and in vivo. Nutrition, 27: 287–92.
※10 S. L. Glisan et al., 2017. Inhibition of pancreatic lipase by black tea theaflavins: Comparative enzymology and in silico modeling studies. Food Chem., 216: 296-300.
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④脂っぽい食事やスイーツは、高分子紅茶ポリフェノールで後味スッキリ!

食事やスイーツを食べたときに、口の中が脂っぽくベタついて、後味が不快に感じることがあると思います。口の中で感じる脂っぽさは、食事やスイーツに含まれていた油脂が口の中に残り、第6の味覚とされる“脂肪味”を感じることが原因と報告されています。このような脂っぽさを感じる食事のときには、一緒に紅茶を飲むと口の中がサッパリして、より美味しく食事を愉しめることは、これまで経験的に知られていました。最近の研究によると、この紅茶がもつ後味をスッキリさせる作用は、①紅茶ポリフェノールが口の中に付着した油脂と反応して剥がす作用(ウォッシュ効果)や、②紅茶ポリフェノールが口の中をコーティングして脂肪味を感じにくくする作用(バリア効果)によるものと考えられています。

そこで、実際に脂っぽい食品を食べたときに感じる不快な後味を、紅茶を飲むことでスッキリさせることができるか、官能評価により検証しました。社内パネリスト6名に市販のバタークリームを一口食べてもらい、その直後に水または紅茶を飲用して、後味として感じる“口の中の油っぽさ”の強度に基づいてウォッシュ効果を評価しました。その結果、紅茶を飲用したときは、水を飲用したときに比べて後味として残る口の中の油っぽさが減少することが示されました。また、紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールの濃度が高いほど、口の中の油っぽさが減少することも示されました。この結果から、紅茶のウォッシュ効果は、紅茶ポリフェノールによる作用であり、紅茶ポリフェノールの濃度が高い紅茶ほどウォッシュ効果が高くなることが分かりました。

次に、社内パネリスト6名に水または紅茶を飲用してもらい、その後、市販のバタークリームを一口食べた直後に後味として感じる“口の中の油っぽさ”の強度に基づいてバリア効果を評価しました。その結果、紅茶を飲用した後は、水を飲用した後と比べて後味として残る口の中の油っぽさが減少することが示されました。ただし、紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールの濃度が違っていても、口の中の油っぽさは同程度しか減少されないことも示されました。この結果から、紅茶のバリア効果は、紅茶ポリフェノールの濃度が一定量あれば効果が期待でき、濃度の高低によって効果が変わるものではないことが分かりました。

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⑤テアフラビンは紅茶を作るときに作られる特別な高分子紅茶ポリフェノール

紅茶は、緑茶やウーロン茶と同じチャノキ(Camellia sinensis)という植物の生葉から作られます。チャノキの生葉には、カテキンと呼ばれるポリフェノール成分を約27-40%含みます。

紅茶を作るとき、生葉が萎れて柔らかくなるまで置いておく「萎凋:いちょう」という工程があります。このとき、生葉の中にある酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)の働きが活発になります。その後、「揉捻:じゅうねん」と呼ばれる工程で茶葉の細胞が壊れることで、酸化酵素が茶葉全体に行き渡り、生葉の中に含まれていたカテキン類が結合して高分子紅茶ポリフェノールが生成されます。

紅茶ポリフェノール生成のイラスト

特に、高分子紅茶ポリフェノールの一種であるテアフラビン類は、このような紅茶の製法だからこそ生まれる紅茶特有のポリフェノールです。テアフラビン類は、生葉に含まれるカテコール型カテキンとピロガロール型カテキンが結合することによって生じ、きれいな赤橙色を示す成分で、カテキン類と同様に強い抗酸化作用を示します。紅茶は産地によって製法が異なるため、生成される高分子紅茶ポリフェノールの量や組成は異なり、それぞれの産地茶葉の味わいや水色を特徴づける要素の一つになっています。

カテキンからテアフラビンが生成される反応経路
カテキンからテアフラビンが生成される反応経路※12
※12 Takino, Y. et al., 1964. Study on the Mechanism of the Oxidation of Tea Leaf Catechins. PartIII. Formatin of a Reddish Orange Pigment and its Spectral Relationship to Some Benzotropolone Derivatives. Agr. Biol. Chem., 28(1): 64-71.
紅茶の発酵度による水色の違い

紅茶の発酵度による水色と味わいの違い

ヌワラエリヤ:発酵度が浅く、淡く明るいオレンジイエローの水色で、緑茶にやや似たすっきり爽快な渋み
ウバ:明るく赤みのあるオレンジ色で、刺激的な渋味がある力強い味わい
ケニア:湯を注ぐと直ぐに色が出て、赤みが強い鮮やかな紅色の水色が特徴

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