紅茶の美味しさを多くの人と共有するツール
「紅茶キャラクターホイール」を開発
紅茶の様々な特徴を多くの人と共有するため、「香り」、「味」そして「水色(すいしょく:紅茶液の色)」の表現を整理し、世界で初めてとなる紅茶の美味しさの伝達や商品開発に生かせる基本ツールを構築しました。
開発の背景
紅茶の美味しさは、「香り」、「味」そして「水色(すいしょく:紅茶を淹れた時の抽出液の色)」の3つの要素で表され、この3つのバランスで、紅茶の多彩で複雑な特徴が生まれます。この特徴を人に伝えるに当たって、特徴の表し方とその捉え方の個人差(注)が影響し、必ずしも共通の認識が得られるとは限りません。
(注)個人差は、個人の生活環境、食経験、世代や性別の違いなどにより生じます。
ワインやウイスキー、ビールなどの嗜好品では、香りと味の特徴を表現したフレーバーホイールや、香りに着眼したアロマホイールなどがコミュニケーションツールとして開発されています。紅茶でも、香りのみに着眼したアロマホイールが海外で発表されていますが、その表現の中には日本では馴染みがないものも少なくありません。
そこで、私たちは 紅茶の「香り」、「味」、「水色」の3つの特徴(キャラクター)を、より多くの日本人と共有、また伝えるために、コミュニケーションツールとして、紅茶キャラクターホイールを開発することを目指しました。
紅茶の「香り」・「味」・「水色」の表現
香りと味の表現については、インド(ダージリンファーストフラッシュ、ダージリンセカンドフラッシュ、アッサム、ニルギリ)、スリランカ(ウバ、ディンブラ、ヌワラエリヤ、キャンディ、ルフナ)、ケニア、インドネシア(ジャワ)、中国(キーマン)、日本といった産地の等級、生産時期、製法が異なる紅茶20点を評価対象としました。
まず、弊社の紅茶の鑑定購買部門の鑑定士、研究開発部門の研究員およびティーインストラクターの有資格者により、それぞれの紅茶抽出液の香りと味に関して思いつく限りの表現を出しました。その結果、重複した表現を含めて香り520語、味139語が抽出されました。これらの表現を、見本となる香りと嗅ぎ比べながら集約し、香り見本を用いた定義づけをすることで、できるだけ多くの人が共感できる香り9系統50語、味5語に整理しました。
水色の表現は、インド、スリランカ、ケニア、インドネシア、中国、日本の紅茶168点を評価対象とし、色見本と照らし合わせ、水色表現を5語に整理しました。
紅茶の表現の体系化
集約された紅茶の「香り」9系統50語、「味」5語、そして「水色」5語を整理してホイール状にし、紅茶キャラクターホイールを完成させました。
紅茶キャラクターホイールでは、「香り(AROMA)」、「味(TASTE)」と「水色(COLOR)」の3つに大きく分類しています。「水色」には5語の代表となる水色写真を外層に配置し、イメージしやすくしました。「味」は紅茶に特徴的な5味を配列しました。また、「香り」は2層目に香りの質を表す小分類(Green、Woodyなど9系統)、3層目には小分類に属する具体的な表現(若草、ごぼう、スズランなど50語)を配列しました。「香り」の「フルーティー」部分については、表現数も多いため、さらに「フレッシュフルーツ」と「加工フルーツ」に大別しました。
紅茶キャラクターホイールの活用
紅茶キャラクターホイールの目的は、ホイールの用語を使って紅茶の特徴を共有、伝達することです。そのため、このホイールの用語は様々な紅茶の特徴を表現することができ(着香茶を除く)、かつ、より多くの方がイメージしやすいものとなっています。
たとえば、アッサムの特徴である「モルティー」といった表現は、あまり馴染みがありませんが、このホイール中の表現を用いることでスイートポテトと黒砂糖様の複合的な香りと言い換えられます。また、ウバの特徴を伝える際に用いられる「ウバフレーバー」は、湿布薬様の清涼感がある香りと表現でき、日本人でも特徴がイメージしやすくなります。
様々な紅茶の代表的な特徴をこのホイールを用いて評価し、可視化した一例を以下に示します。このように可視化することで、言葉からのイメージを超えて、一目でそれぞれの紅茶の特徴を把握することができるようになります。
紅茶キャラクターホイールは二年がかりで作り上げ、2014年4月1日にリリースしました。多くの方に紅茶の美味しさを伝えるツールとなることを期待しています。
参考) 大野敦子, におい・かおり環境学会誌, 2014;45(5):344-350.