お茶の健康パワー

脂質代謝改善作用(1)

お茶のポリフェノールと脂質代謝

不規則な食事による栄養の偏り、ストレスで暴飲暴食、皆さんにも心当たりがありませんか?コレステロールの摂りすぎは、血液がドロドロになり、動脈硬化を引き起こす原因となります。中性脂肪は摂りすぎると肥満につながる恐れがあります。一方で、お茶に含まれているカテキンやテアフラビンは、血中のコレステロールや中性脂肪を低下させる事が知られており、「コレステロールが高めの方」「体脂肪が気になる方」向けの特定保健用食品のお茶が数多く発売されています。
ここでは、茶ポリフェノールのコレステロール低下作用について、実験結果をもとにご紹介します。

カテキンのコレステロール低下作用

血中のコレステロール濃度は食事によって影響されることが知られています。悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが多くなると、血管壁にコレステロールが沈着して動脈硬化が促進されます。反対に、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが多くなると、動脈壁や末梢組織にためこまれた余分なコレステロールが肝臓へと運ばれ、動脈硬化が抑制されます。

私たちは、ラード15%、コレステロール1%を含む高コレステロール食に、お茶に含まれるカテキンの一つであるエピガロカテキンガレート(EGCg)を添加してラットに4週間与え、血中コレステロールへの影響を調べました1)
その結果、通常の餌(Control)に比べて高コレステロール食のみを与えたラットは血漿LDLコレステロールが増加しました。一方、高コレステロール食と同時にEGCgを摂取したラットでは、EGCg添加量が多くなるほど、血漿LDLコレステロールの上昇抑制と糞便へのコレステロール排泄増加が観察されました(図1)。つまり、EGCgは食事として摂取したコレステロールの吸収を抑えて糞便へと排出させることで、血中のコレステロール値を改善させたと考えられます。

図1.EGCgのコレステロール低下作用お茶博士
図1.EGCgのコレステロール低下作用
*p<0.05(1% コレステロール群に対して有意差あり)

茶ポリフェノールのコレステロール合成酵素阻害作用

コレステロールは細胞膜や胆汁酸、ホルモンの材料として、生体内ではなくてはならない成分です。コレステロールの大部分は生体内(主に肝臓)で合成されており、残りの一部は食事から補給されています。通常、食事からのコレステロール摂取量が多い時は生体内でのコレステロール合成が抑えられ、一定量を保つような調節機構がはたらきます。しかし、何らかの理由でそれらの調節がうまくできなくなると、血中コレステロールの量が過剰になり高コレステロール血症などの脂質異常症になってしまいます。

コレステロールは図2のような経路でつくられることが知られています。コレステロール生合成に関わる酵素の一つであるスクアレンエポキシダーゼが阻害されると、コレステロールの合成が阻害されることになります。
 私たちは、カテキンやテアフラビンに、スクアレンエポキシダーゼを阻害する作用があることを見出しました(表1)2,3)。特に、ガロカテキンガレート(GCg)やEGCg、テアフラビン(TF)などのガロイル基を持つ化合物に、非常に強いスクアレンエポキシダーゼ阻害活性が認められました。

図2.コレステロール生合成経路
図2.コレステロール生合成経路
表1.スクアレンエポキシダーゼ阻害活性
*数値が小さいほど低濃度で効果があることを意味します表1.スクアレンエポキシダーゼ阻害活性

このように茶ポリフェノールには、コレステロールの排出を促進するだけでなく、生体内でのコレステロール合成を抑える作用があることが分かり、茶ポリフェノール摂取による高コレステロール血症の予防効果が期待されます。

【参考文献】
1)福與真弓ら, 日本栄養・食糧学会誌, 1986;39(6):495-500.
2)Abe I., et al., 日本食品化学学会誌, 2000;7(1):47-50.
3)公開特許公報, 特開2000-327572.